先日飛行機の中で書いた事。

9/28 日本時間 19:56
さて、どこから書けば良いのか。僕は今カタール航空ドーハ発東京羽田行きの飛行機の中に居る。搭乗し飯を食い、ひたすらに眠った。映画などは一切見ていない。そんなもので僕の旅の記憶を薄めたくなかった。
途切れた手記から8日間。僕は沢山のサラミやビール、バケット、ワイン、エスプレッソを流し込み、口の中に5つの口内炎を作った。2つのパリコレクションを見て、街を歩き、家に帰ればそこが自分の家かのように沢山眠った。
ファッション、出会い、食べ物、空気、恩、回収。様々な要素がこの旅には凝縮されていた。あまりにも凝縮され過ぎていて、何をしに行ったのか、何を目的として旅に出たのか、確かに最初航空券を取ったのはアンリアレイジのパリコレクションデビューを目視するためであったが、もはやそれは小さな小さな要素の点の一つであるように見える。
僕が心から心を奪われたデザイナーとの珍道中や仕事。アパートへ招き、沢山の話もした。画面の向こうにしか存在していないと思っていたパリの数々のブティック行脚。日本ではまず飲まないエスプレッソを片手に柄にもなくカフェのテラスでぼんやりと過ごす時間。まさかのアンダーカバーパリコレクションの目撃。日も暮れる前から大きなフレンチ生ビールで流し込むコンフィやタルタル、オニオンスープ。ガレットはシードルで流し込んだ。焼き鳥、しめ鯖にレモンサワー、ウーロンハイと甲乙つけがたいほど、うまかった。
人と人の関係。いくら俺と貴様は関係無いと言えど、僕は様々な人と関係をしている。埼玉から東京へと住まいを移し、わけのわからぬ事をやり続ける中で、莫大で様々な関係を経て来た。それは僕の人生で頂上近くであり、それはその先にももちろん関係はあれど、天井の見えた、方向性の定まった関係の広がりのように見えていた。しかしこの数ヶ月間、正確には会社を辞めたその瞬間から、僕の関係は今まで生きてきた中での範囲を一瞬で超え、それは良くも悪くも病的な速度と質量で、僕に成長と混乱を与えてくれた。その状態の中で、時間、能力、金銭、身の丈などを完全に無視して、そこに起こりうる最高の場面だけを想像し、実行した結果、飛行機に搭乗し、バカみたいに遠くまで吹っ飛ばされていた。そして飛行機に乗れば、どこだって行けることを発見した。これはきっとまだ誰も気付いていない発見だと思う。そしてややスピっていた僕の感情も良い具合に吹っ飛ばされ、今は日本に帰るのが楽しみになっている。このどう考えても激動としか言えない日々を落ち着けて、また狭いアパートで始まる日々に何故かわくわくしている。僕にはやるべきこととやりたいことがあって、それはまだ日本に沢山ある。それと向き合い、達成へと目指しながら、またいつか来るこんな素晴らしき日々を楽しみにしたいと思う。
と、完全にスピった文章がメモ帳に残っていたから旅は怖い。また行こう。待ってろ、どこか。