インターネット

小学生だか中学生の頃にダイアルアップ回線による通信でチャットなどをやり始めた頃、僕は恥ずかしいハンドルネームを名乗り、自分を偽り、年上の女性と名乗る恥ずかしいハンドルネームから放たれる文字列に一喜一憂したりした。話した内容は唯一つも覚えていない。MSNでメールアドレスを取得し、友人とメールをし始めた。違法音楽共有ソフトの話、外では言えない悪口、声に出すことさえも恥ずかしい恋の話。こちらも内容は思えていないが、たぶんそんな感じだったと推測する。幸いな事に当時使用していたアドレスは消滅しており、メールを読み返すことさえ出来ない。裏サイトなども存在していたような話も聞いたような気もしたが、今で言うLINEいじめみたいな、悪行の温床のような印象は当時はあまりなかったように思う。

ミクシーは紹介制という血縁的縛りと、自分を自分としてインターネット上に晒すことへの抵抗、そして単純に何をしたら良いのかあまり分からず、コミュニティみたいなのに色々入って俺はこういうの好きなんだぜアピールなどを一頻りした後、することがなく退会した。今となってはそこで生まれた交友関係や、ディープな日記など、面白いカルチャーだったと話す人によく会うので、その世界をもうちょっと体験したかったと少し後悔している。(黒歴史だと嘆く人も同じかそれ以上見かけるが)

大学に入った頃、ブログを始める。ファッションデザインの勉強をしていたため、当時流行っていたデザインプロダクト紹介ブログなどに影響を受けて、そのようなブログを目指し、始めた。そのようなブログの中に時折現れる、仕事への姿勢、物事の考え方、みたいな今考えるとちょっとサムイ自分語りみたいなのがとてもかっこよく思えて、学生なりにそういった事も書いたりした。絶対に遡って読んだりして欲しくはないが、それも自分なので消してはいない。そんなブログももちろん実生活の事を書いてはいるが、ご丁寧に友人にURLを送る事など絶対にしなかったので、実生活との交わりは無かったが、大学の先生との会話の中で不意にブログをやっているという話になり、見せたところ、課題の論文なんかより良いじゃないかと(かなり美化された記憶だが)初めてインターネット上に放出していたどこか恥ずかしいと思っていた言葉なり写真なりを褒められた事により、個展の情報や、課題の感想など、少し検索すれば僕が実際どこで何をやっている何者なのかに到達してしまうような情報も発信し始めた。

(この間にニコニコ動画ニコニコ生放送という期間もあるが、黒歴史すぎるのでここでは割愛します)

そしてほどなくして、Twitterが登場する。飛びついたものの最初はもちろん使い方もわからず、好きなサイトの管理人やインディーズブランドのデザイナー、地下アイドルやネットレーベルのトラックメイカーなど(当時トーフビーツのフォロワーは300人ほどで、すげー!と思った)をフォローし、僕は課題がダルいやら、酒が飲みたいやら、ドブに捨てるような言葉をぽつりぽつりと本当の意味でつぶやいていた。自分ではあるけど自分ではない、自分の良い部分と、悪いんだけど面白いであろう部分を誇張してツイートし、あのフォロワーは反応してくれるかな?と会ったことの無い人へのアピールをそれとなくしてみたり、誰も訊いていない自分語りをして悦に浸ってみたり(この文章もそうだが)現実と繋がっているようで繋がっていない、掃き溜めまではいかないけど、思い浮かんで口に出そうとすると、グッと飲み込んでしまうような何かを持った言葉をタイムラインに流していたような気がする。

それから少しして、その面白さを親しい友人に話し始め、その世界に実世界の友人が少しずつ混じり始める。とはいってもかなり親しい間柄の友人だけだったので、その自分のやや別の側面を見せる事も、関係を深める手段となるので、そこまで感覚は変わらなかった。そしてなにより、Twitterは今となっては、何かの出典として頻用されるほど、オフィシャルな情報発信方法として定着しているが、当時は本当に一介のブログサービスというか、コテハン必須の2ch的な、ライトな使用感があり、下手な事が言えない感じが一切なかった。

まぁ結局こういう古参アッピルをして何が言いたいかというと、現実しかなかった幼少時代から、インターネットにより、顔を突き合わせない交信が容易になって、別人格というか、ある意味の本音を吐露出来る空間が出来た。しかしそれが発達し過ぎた事によって、それが逆転し、インターネットのアカウントが自分の情報発信場所となって、作られた主人格に成り代わり、誰にも引用リツイートされる事のない現実が、別人格、繰り返すがある意味本音、となる時代にいつからなったろう!と嘆こうと思ったんですが、現実の世界で本音で話せるって、それって、なんか、普通だし、別にええやん。という話です。別鍵アカなんて作らんで、現実で話してこ!