喫茶店から

12月21日16時。大阪のなんばにある喫茶店の端っこの狭い席に座っている。客は僕しか居ない。雑然とした植え込み越しに夕陽が射してくる。あまり綺麗で無いコーヒーカップに注がれたコーヒーは、濃いコーヒーが苦手な僕にとってドンピシャな味で、奥底にコーヒー味の飴みたいな香りがして、とにかく僕にとってめちゃくちゃうまい。

テレビからは今年も残る事あと10日となりましたという声。店主のおじいさんはどこかからかかってきた電話に、そのままでええ、ややこしいからと、何やら面倒臭そうな電話をしている。テレビからの声と、おじいさんの関西弁が混じり、年末だなぁという気分を盛り立ててくる。

大阪にはイベントの撮影の仕事で来ているが、1人で行う簡単な撮影なので、早めに来てカツヤのとんかつカレーBを食べた。チュートリアルの徳井さんのYouTubeで見て来てみたかったのだ。味はかなり想像した通りで、大きな驚きは無かったが、しっかりと美味しかった。時間が少し経った時にまたふと無性に食べたくなりそうである。そしてそのすぐそばにある適当に入った古ぼけた喫茶店で、コーヒーを飲んでいる。

ここに着くまでに街の写真を結構撮った。来た事の無い場所で、しかも遠い場所というのはやはりワクワクする。ましてやこの情勢なので、遠出したのは仕事とはいえいつぶりだろうか。見た事があるようで見た事の無い街。この店に偶然に居る事が奇跡のように思えてくる。うちの近所にあるよく行くラーメン屋にだって、行くのは奇跡なはずなのに。でもどちらも確かに奇跡だとも思い始める。窓から遠くに見える団地には人がいっぱい住んでいる。この夕陽もあと少しで沈む。僕はもう少しでここを出て仕事へ向かう。