今日いつもの定食屋で昼ご飯を食べた時の事。

いつものように4度寝くらいしてお昼近くに会社へ。

アパートを出ると日が差していたが、夜は雨だというので自転車ではなく電車で行くことにする。電車では峯田和伸さんの恋と退屈を読む。色々新しい本は買ってはいるのだが、途中で飽きてしまいすぐ他の本を読んでしまう。そして結局それも飽きてまた恋と退屈を読む。毎日の日記がまとまった本なので、いつどこを開いても読めるのが良い。今日も電車内で涙ぐむ。

会社に着いて仕事を始める。今週いっぱいで僕はこの会社を退社するので、データのバックアップや、棚の整理などをする。別に面白くもなんともないが、大変ではないし片付けは嫌いではないのでたんたんと行う。2時を過ぎ、そこまでお腹は空いていなかったが、いつもの定食屋は14:45でラストオーダーなので向かう事にした。

僕が会社を辞めるにあたり、最も残念な事は昼にこの定食屋でご飯が食べられなくなることだ。全品500円。

最初はチキン南蛮ばかり食べた。天ぷらのような衣で揚げられた鶏肉に南蛮漬けではなく何故かタルタルソースがたっぷりとかかっている。次は生姜焼き。あっさりしてるので150円増しでライスを半チャーハンに変更することを覚えた。かた焼きそばの大盛り650円は大皿料理のような超盛りだが、お酢をかけてまりまりと食べると意外と完食できた。そして最後に見つけて、最後まで虜になったのがマーボー丼。ほぼ全ての定食には味噌汁(吸い物のものある)が付くが、マーボー丼は、ドンッとご飯に麻婆豆腐が乗っているものだけがくる。山椒がもりもりかかっていて、ご飯の底には赤い油が溜まっているかなりジャンクなマーボー丼。最後までそれをひたすら掻き込むのだが、さすがに飽きるので、単品の漬物をいつも付けた。

もうここ最近は会社で出前を取る時以外、毎日通っている。12時過ぎに行くと10人近く並んでいるが、ラストオーダー間近に行くとギリギリ待たずに入れるので今日もその時間を見計らって向かった。開け放った引き戸の前には待ちが一人。黙ってその後ろに並び、また恋と退屈を開く。長野の病院に入院している時期の日記だ。大好きな部分。また涙ぐむ。

少しすると席が空いたので店に入る。窓を全て開け放っているにも関わらず、今日もモウモウとしている。ババっと食べて店を出ても、こってりと髪に臭いがついてしまうレベルだ。今日もマーボー丼と漬物を注文。また本を開き、目を落とす。また涙ぐむ。

いつもよりは少し時間がかかり、赤々としたマーボー丼と漬物がやってくるが、いつもと違う。ずっと白菜だった漬物が、きゅうりになっている。そういえばずっと前はきゅうりだったな、と思い出し、季節で変わる事に気付く。だらっだら汗をかきながらマーボー丼を掻きこむ。真夏になったらとても食べれないなと思う。

少し塩辛いきゅうりの漬物を食べ、ティッシュで汗を拭きながら、もうすぐ夏が来るんだなと思った。

 

 「もう会えない」「いつか忘れる」

 いいじゃないか。それにしたってこんな日記でも書いていれば、いつかこれを読みかえした時に、少しでも思い出せるじゃないか。

 会った人、みた景色、青いベンチ、恋は水色、昨日の僕。

 僕の馬鹿みたいな脳みそが勝手につくって勝手にみせてくれて勝手に消えていっちまう夢なんかより、全然ましだ。

 峯田和伸「恋と退屈」より

 

また涙ぐむ。