今さっきうな丼が食べたくなった時の事。

今の時刻は18時08分。

用事を終え、帰路についたのは14時半。ラーメンでも食って帰ろうと思ったが、ラーメン屋に入ってしまうと自動的にビールを注文してしまう病を患っているので、今日こそは色々やらなければ。と、思い直す。

ふと駅前の牛丼屋の前を過ぎる時、うな丼が目に入る。暑い日も続いてるし、ここらでキメたいな。とは思ったが牛丼チェーンにしては高いし、餅は餅屋的な古い考え方なのでやはりスルーする事にした。

少し考えてみると僕は本当にうなぎが食いたいのか?という疑問を持った。確かにあの柔らかくて香り豊かな身はそれなりにうまいが、今僕が想像上で魅力的に写っているのはあの蒲焼きの甘く香ばしい味と、それを引き締める山椒の香りだ。そうに違いないと確信し、帰宅途中にある成城石井に駆け込んだ。

その瞬間少し面倒くさくなり、適当にコロッケでも買ってパンに挟んで食おうと思い惣菜コーナーに向かったが、ここは成城石井。「タイ風冷製ラーメン」みたいなややこしい惣菜しかなく、揚げ物一つ見当たらない。僕は諦めて再び蒲焼きへの挑戦を誓い、調味料コーナーに向かう。

すると見事にいかにも高級そうな京山椒を発見。しかもミニ瓶だったので、ただでさえ使い切ることの難しそうな調味料であるがゆえ、迷わずレジに向かう。途中で適当な肉でも買おうと思ったが「生産者の顔が見える」みたいな高いやつしか無かったので見なかった事にする。あとドレッシングが切れていたので「コスモ」というかなり大それた名前のメーカーのカレードレッシング辛口というのを買ってみる。

会計をすると2点で800円。たけぇ。この5gの山椒400円だ。さっきディスクユニオンで買ったDonald FagenのThe Nightfly(USオリジナル盤ジャケテープ補修あり)でさえ300円だったというのに、この山椒は5gで400円だ。高いよ。帰り途中にある100円ローソンで安い豚肉の薄切りを買い家に帰った。

帰宅し料理を開始する。炊飯器をセットし、いつもは浸けないですぐ炊飯を押すところを少しだけ浸けてみる。さっき買ったレコードもプレイする。良い。

豚肉を先に焼き、皿にあけ、蒲焼き風のタレをフライパンで作る。先に食べる分だけタレを絡めて焼き、焦げ目が付くまで焼いた。分けて焼いた意味は特に無い。別に誰も見ていなかったけどちょっと玄人っぽいからやってみたが洗い物が一つ増えただけだった。

レコードの片面を3回くらい聴いていると炊飯器が鳴ったので皿に盛り、上に焼いた豚肉を乗せる。即席の卵スープを作り、サラダにさっきのカレードレッシングをかけた。軽く片付けたデスクに食器を運び、ついに京山椒の蓋を開ける。見たことのない内蓋で少し戸惑ったが真ん中のシールを破ると少しだけ穴が空いたのでたぶんこれで良いんだと思う。パッパッと豚丼に振りかけると青臭い裏庭のような香りが漂う。(実家の裏には山椒がなっている)

ここに辿り着くまで割と時間がかかっている。たまごスープを飲んでから豚丼を食べる。おお!これはまさしく…豚丼に山椒がかかったものだ。食べた事ないけどチカラメシみたいな感じだと思う。別に全然まずくないけど、これは豚丼である。山椒はまぁアクセントにはなってるけど、たぶんちょっと良いやつを買いすぎたようで本当に裏庭を食ってるみたいである。僕の頭の中にあるうな丼の要素はこの中には一つもない。

全て食べきり食器を洗いながら、明日はうな丼でも食べようかなと思いました。作りすぎたので夜食も豚丼です。


Donald Fagen - "The Nightfly" - YouTube